今日というこの日☆に・・・

さっき、女性の常連のお客さまがご来店・・・

このお客さまは、

我が家が檀家のお寺の方でして・・・

「たしか、今日が命日だったですよね?」

と、ボクが尋ねると、

「えっ!」

そのお客様はビックリしたご様子で、

続いて、

「もう、12年でしたっけ?」

と、ボクが尋ねると、

「は、はい、13回忌なので・・・」

とだけ答えて、

その後、そのお客様は絶句した。

そりゃそーだ、

自分の旦那の命日と亡くなってからの年数までをさ、

他人さまのボクが覚えてるなんてさ、

ってか、

お寺の方が檀家の方の命日を覚えてるならまだしも、

その逆!だからね~、

誰だって驚くよね。w

その亡くなった旦那さまというのは、

そのお寺の先代のご住職さま☆だった。

 

18歳のボクが親父のお店を手伝い出してから間もなく、

ボクよりも歳が一回り以上、年上のこのご住職さまと、

友だちのよーに仲良くなった・・・

檀家の方々には、一目置かれていた、

歴史のある立派なお寺のこのご住職さまと若いボクがタメ口で話す・・・

それを見た、親や親せき、周りの大人たちは、

そんなボクに呆れていた。w

東京からやって来た、このご住職さまは、

ちょっと言葉が荒い標準語で、

「オマエはダセ~んだよ!」

とか

「オマエは根性がねーな!」

とか

まぁ、いつもこのボクをダメ出ししてくれる、

数少ない人の一人だった。

 

ボクが20歳の頃には、

2人がそれぞれにスカイラインGTRを買って、

また、それぞれに改造して、

互いに高速道路でかっ飛んだ話などを語り合った・・・

そんなご住職さまが、

ボクには、まったくお坊さまには思えなくて、

「お坊さまってお肉を食べないんだよね?」

って聞くと、

「食べるに決まってるだろ!」

マジか!

「悟りの境地ってあるの。」

って聞くと、

「あるわけねーだろ!」

そーなの!

「白山を開いた泰澄さまは、かなりの達人でしょ?」

って聞くと、

「あんなのは、弟子たちにやらせたインチキに決まってるだろ!」

まぁ、こんな感じで、

(クソ坊主!ってのは、こんな人を言うんだね!)

なんて、ボクは思ってね、

クソ人間のボクは、すごく好感が持てた。

けど、

「じゃ、蚊は殺すよね?」

って、聞くと、

「殺さねー、手で追い払うだけだ。」

だってさ。w

そんなご住職さまが

いつも爆音を響かせながら走り回っていた、

あのGTRは、

いつだって、

とても良いお香の香り♡がしてた。

「イイ匂いやね。車の香水がいらないね。」

って言うと

「オレは安モノのお香は使わねーんだよ!」

だってさ。

好きだったな~、あの匂い。

 

ボクが37歳の時だったか・・・

お店に来た、ご住職さまに

「オマエは根性がねーからオレと一緒に滝行に来い。」

突然、誘われた。

このご住職さまは修験道もやられていて、

毎年、白山の山開きの時には白山へ登ったり、

滝行やら何やらをやってたよーで、

「空手で良くなれそーだからやってみる~!」

と、ボクは即答して、

その滝行に参加した。

当日、

ご住職さまとそのお弟子さん、

そして修験道の仲間とボクの10人ほどで、

滝行をやった・・・

一人ずつ、ご住職さまと相向かいで立って、

滝に入り、打たれながら「般若心経」を1回唱える・・・

そんな修行だったけれど、

お弟子さんたちやボクは、

滝から上がると、ブルブルと身体を振るわせて、

「寒~い~!」

なんて言ってたのであるが、

よく考えてみると、よく見てみれば・・・

ご住職さまは、ずっと滝に入りっぱなし!じゃねーかー!

全員が終わるまで、滝に入ったまま、「般若心経」を唱えたのだった・・・

それに気づいた途中から

そんなご住職さまを見てたら

急に

「カッコいい~~!」

滝に打たれながら「般若心経」を唱えてる、

そのご住職さまの姿☆がカッコよく思えた・・・

その立ちが!まさに!美しかった!

「この人、ホンモノやったんや・・・」

ボクの中で、どこからともなく、そんな声が聞こえた。

長い付き合いなのに今さら?・・・こんなこともあるんだねw

でも、

ご住職さまは、

そんなボクの思いを知るはずもなく、

その滝行が終わると、

やっぱり、

「空手やってるくせに、オマエは根性がねーな。」

・・・・・。泣

 

それからは3年間、毎年、その滝行に参加した・・・

その3年目の9月、

「今度は山へ一緒に来い。」

また誘ってくれた・・・

そのちょっと前まで・・・

ご住職さまは、ガンになられて退院したばかり・・・

その入院を知ったボクは、

すぐに一人で白山に登って、

山頂の神社でお守りを買って祀り、参拝祈願して、

ご住職さまの奥様にそのお守りを渡してもらった・・・

入院してる姿をボクには見られたくないと思ったから。

すると、

「ありがとう。オマエのお守りのおかげで、もう治ったよ。」

まだ入院中のご住職さまから電話があった。

で、

病院を抜け出しては、檀家の家のお参りに回っていたそーで、

それを注意した人には、

「病院で寝てたら、病気が治るのかよ!」

だってさ。w

 

9月12日の午後・・・

そんなご住職さまと滝行のメンバーで「文殊山」に登った・・・

ボクは、低い山に登るのが初めてだったけれど、

午前中は空手の稽古をやった後に行ったからか

けっこう疲れてしまった・・・

「いや~、低い山のくせにさ、意外と疲れるな・・・」

なんて話しかけると、

「オマエは根性がねーんだよ!」

やっぱり・・・な。w

そんなボクの隣でホラ貝を持ったご住職さまは、

何度やっても、そのホラ貝の音が上手く鳴らず・・・

「ん?何でだろ?」

なんて言いながら、やっていたけれど、

ボクは、別に気にもせず、

一緒に山を歩いていることが嬉しかった。

また、

下りでは、ご住職さまは2、3回ほど、足を滑らせてはコケていた・・・

「どんま~い♪」

なんて、からかってた。w

そして、

下山すると、

ご住職さまは、山の方へ振り返り、

手や指を何やらいろいろと動かしながら

頭を下げて、山に向かって何かを唱えてた・・・

何かさ、それが神々しく見えてさ、

ボクも隣で一緒に頭を下げた・・・

他の仲間たちは、

そんなご住職さまには気づきもしないで、

「疲れた~。」

なんて言いながら、

一目散に自分の車へと向かって行ったが、

きっと、

山に感謝を捧げてたのだろー、

そんなご住職さまの姿☆が、また、

「やっぱり、ホンモノや、この人は・・・」

ボクは、そー思ったけれど、

駐車場に戻っても、

「空手をやっていても、オマエは根性がねー!」

だってさ。

どーやら、

そんなご住職さまには、

このボクのイメージは変わらないらしい⁉w

ちょっと前まで入院してたのにさ、

ま、こんな人間には敵わなねーよな!

そんな3ヶ月後、

12月13日・・・

お寺のお坊さんがお店に来て、

「ご住職さまが亡くなった・・・」

え!

今、何て言ったの?

アンタ、ボケたのか?

なっわけねーだろ!

白山のお守りで治ったって言ってたじゃん!

それにさ、

ほんのちょっと前、1週間?10日前だったっけ?

オレのお店に元気な姿で来てたじゃん!

ウソやろ!

頭が真っ白になった。

 

すぐにお寺にすっ飛んで行くと、

お布団の上で永遠の眠りに就いた、ご住職さまがいた・・・

全身が震え出し、涙が溢れ出てきた・・・

そして、

9月の文殊山を無理して登ったこと・・・

下山後は2週間ほど体調を崩して寝込んだこと・・・

お弟子さんから聞かされた・・・

「だから、ほら貝が吹けなかったのか・・・」

その時になってわかるなんて・・・。

そんな登山後も、

ボクの前では、会う度に、

「オマエは根性がねー!」

と、身を持って示し、言い続けてくれた人・・・

そんな人を

ボクは忘れない・・・

忘れることなんて出来ない・・・

ってかさ、

ずっとさ、

ボクの中で生きてるんだ・・・

でさ、

ボクがへタれそーになるとさ、

「オマエは根性がねー!」

ってさ、

今でも、

ボクの中のどこかから顔を出して言ってきやがるの。w

あのさ、

アンタのおかげでさ、

もう、オレは根性がついたよ!

だからさ、

ボクは、

今日というこの日☆に・・・

感謝と願いを込めて言うのさ、

 

「早よ、オレの中でくたばりやがれ、クソ坊主!」

 

あれ?

いや!だってさ。w

 

咲 心太郎

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