前の道場に在籍していた、今から15年くらい前だろーか、
この道場の大会が県立武道館で開かれるたびに、
ワタシは当時この武道館がビデオの無料貸し出しをやっていたので、
大会終了後に何本かビデオを借りて、家に帰ってから観ていたのである。
そんなある日、何気に借りたどこかの空手団体の大会のビデオを観ていたら、
大会の合間の演武に一人のおじいちゃんが出てきたのである。
どーみても80代後半くらいで、ヨタヨタに見えるおじいちゃんである。
で、若いお弟子さんたちが木の角材を持って立っていて、
ヨタヨタ歩いて近づくと「オッ!」と発声したと思ったら、角材が真っ二つである。
で、次から次と角材を切るのであるが、
どー見てもそのおじいちゃんの動きはゆっくりしてて力強さもなく、
「こんなんインチキだろッ!」
と思ったのである。
それでも気になって何度か見直したのであるが、
やっぱり、どー見てもインチキだとしか思えなかったのである。
で、そんなことも忘れた数年後、
武道の達人を何人か取り上げて検証した本を見つけて買って読んだのである。
すると、その本の一番最初に取り上げられていたのが、
あのおじいちゃん!
だったのである。
なんと、あのおじいちゃん、
空手道拳道会 中村日出夫先生というスゲー空手家だったのである。
って、このとき知ったのである。
で、「角材切り」で有名だったようで、この本でも「角材切り」を取り上げていて、
木に手が当たる直前は、
時速1200km!
それくらいのスピードが出てないと、あんな風には角材は切れないそーである。
また、そのあり得ない速さを証明するかのように、
録画したビデオをどれだけスローにしたりしても、中村先生の手が消えている・・・
速すぎて、カメラで撮ったビデオには手が映っていないというのである。
マ、マジかよ。
スゲー衝撃を受けたのである。
どーみてもヨタヨタの老人のスローな動きにしか見えないのに、
何度観てもインチキにしか見えないのに、
おじいちゃんが本当に手で角材を切っていたのである。
「なんで、そんなことが出来るんだ?」
あれから15年くらい経った今、
きっと、こういう身体の使い方やこういう力で角材を切ったんだろーなー。
と、思えるようになったワタシである。
でも、ワタシは角材を切れないのである。
まだまだ、この力が中村先生には及んでいないし、それよりも何よりも、
「角材なんて切りたくねー。」
のである。
ま、何事もコレ、自分の思いというものが一番肝心なのである。
なので、今後、稽古修行の成果で、中村先生よりもこの力が大きくなれたとしても、
ワタシは死ぬまで角材を切ることはないのである。
この力を「角材切り」に使うのは、
「もったいねー。」のである。
咲 心太郎
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